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Requiem ~Le début...~

2009/08/03(Mon) 14:39
*物語*

カレンダーの7月31日と8月1日が赤い丸で囲まれている。

結衣は朝早くから、あれもある、これもある・・・と、
キャリーケースに詰め込んだ持ち物を凝視して点検中。

「うん。忘れ物はないかな・・・
あ!オルゴール、持って行かなきゃ。・・・聴かせてあげるんだ。」

一人旅なんて、勿論初めて。
家族に相談したら、まだ無理だと大反対。
それでも、どうしても行きたい。・・・もう子供じゃないんだよ。と粘り強く話すと
"全部自分で何とかする"のを条件に渋々OKしてくれた。

「ふぁぁ~・・・。って、バスの中とか電車の中で寝ないようにしなきゃだよ・・・。」

少しだけ自由になれた気がして。
許して貰えた事が凄く嬉しくて、ワクワクして夜はあんまり眠れなかった。

「ホテルだけはお父様のお友達の経営するホテルを手配してくれたし・・・。
無事に迷わずたどり着けるかが問題だよ・・・。」

若干不安を残しつつも、なんとかなるよ!といういつもの勢いで。

「行ってきます・・・!」

見送る母と千代子を背に。
振り返らずに、朝陽と共に歩き出す。

「っっわぁ!」

・・・躓いた。
それを見ていた2人は「本当に大丈夫かしら」と、オロオロしつつも見送った。


学園に来ていなければ、こうやって一人で何処かに行こうなど、思いもしなかっただろう。
ずっと自分は鳥籠の中で笑っているんだと、思っていた。

色々思いを巡らせつつバスや電車をなんとか乗り継ぎ
・・・少し迷いはしたものの(そして何もないところで躓き転ぶのはお約束)、
道行く人に尋ね歩いて何とかホテルまで到着した頃にはもう夕方。
ほっとした所で重い荷物を降ろす。

「よいしょ・・・。えっと、まずはチェックイン・・・。
あ。ありがとうだよ♪」

「荷物をお持ちしますね。」と女性スタッフが持ってくれる。
と、見た目では分からない程の重量に蹌踉めく。
一体何が入っているのか・・・と首をかしげながらも。

カウンターへ向かうと中年の男性が出迎えてくれた。

『おや、もしや・・・有朱君のお嬢さんの結衣さん・・・かね?』
「はい!って、えええ!?えっと、どど、どちら様で御座いますですかだよ!?」

どうして君付けなのか、どうして名乗っていないのに名前を知っているのか、この人は誰なのかと
色々吃驚、混乱している結衣に【永井】という名札の中年の男性は大笑いしながら

『はーっはっはっは・・・!!落ち着いて下さい、そんなに驚かなくとも。
まぁ、覚えていないのも当然でしょうな。私は永井と申します。』

自己紹介を済ませると、名刺を渡される。

「はわわ、ご、ごめんなさい。名刺ありがとうござ...
あ!もしかして、ボクのお父様のお友達の永井さん・・・かな?」

『ええ、その永井ですよ。結衣さんのお父様とは腐れ縁でね。
最後に会ったのは結衣さんが3歳くらいだったか・・・。
それにしても大きく…いや、本当に立派に成長されて。』

大きく・・・と言われた瞬間、目線をそらされた気がしたがきっと気のせい。

「うーん、そんなに小さい頃だと覚えてないよ~。
えへへ、もう16歳になったんだよ♪」

『16歳・・・それはもう立派なレディだ。
さぁ、もう今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んで下さい。
お部屋は12階の1205号室ですので。』

お茶目にウィンクを飛ばしながら差し出されたカードキー。
それを笑顔で受け取る。

『それでは何かありましたらフロントまで。ごゆっくりお寛ぎを・・・。』

「はーい!・・・ありがとうだよ永井さん♪」


永井に向かってぶんぶん手を振り、エレベーターで12階へ昇る。
自分を知る人など殆どいないこの場所に、自分一人で立っているなんてやっぱり未だに実感が沸かないでいた。
鏤めた宝石のような夜景を見つめながら耽る。

カードキーを通し、部屋に入るとドレッサーの上にラベンダーが一輪目に入った。
「どうぞ枕元に置いて、お休み下さい。」
というメモにそれは添えられている。

「わ・・・良い香り。ぐっすり眠れそうだよ。」

ラベンダーを手に取り、枕元へ置いてごろごろとまったりしてみた。
が、しかし・・・静かな空間に腹時計が忙しなく・・・体は正直なのだ。

「お腹空いたよ~。ご飯・・・どうしようかな。自分でどうにかしないとなの忘れてたよ・・・。
あ、そうだ。ここに何か載ってないかな。」

自分で全部なんとかするのが条件。
ホテルはまだ未成年だから、と父親が確保してくれたけれど。

机の引き出しに入っていた[ホテル周辺の食べ物屋さんMAP]なる物を見つけた。

「ん~、イタリアンって気分でもないし・・・。あ・・・回転寿司だー!」

以前から行ってみたかった回るお寿司屋さんを発見した模様。

(徒歩約5分)...と書かれている。
こうなれば夕飯は決まり。貴重品だけもってホテルを飛び出し、歩く、歩く。
食べ物ときたら、いつもの結衣では考えられないくらい早い早い。
5分どころか2分で到着。これが結衣の火事場の馬鹿力・・・?

夕飯時間からズレた為か、案外空いていた。
一人なのにテーブル席に通され・・・少しだけ寂しくなる

「わああぁ!本当にお寿司が回ってるよ・・・!」

かと思っいきや。
回るお寿司を初めて見た結衣にとって、そんな事はどうでも良くなっていた。
見つめ続ける姿は子供の様で、店員さんに笑われたりして。

注文も好きな物をディスプレイで選んで注文するだとか。
使用済みの皿を何枚かそれ用の入れ口に入れると、当たり外れの判定があるだとか。
システム的に子供を飽きさせないように出来ているらしい。

「わああ、こんなのあるんだ。全然・・・知らなかったよ。当たらないかな♪」

回転寿司というだけでも目を輝かせている結衣には、まさにここは天国に見えた。
当たらないかと回す度に、満腹中枢も限界へ・・・。

「結局全部外れだったよ~。でも楽しかったなー♪」

『いやだ!いやだ!いやだー!!それ私の!』

何事だろうと振り返ると、小さな女の子と、更に小さな男の子が両親となにやらゴタゴタしていた。
心の中で「ごめんなさい」と思いつつも聞き耳に徹すると
どうやら1回しか当たらなくて、おもちゃが姉だけ貰えなくて我慢させられているらしい。

(可哀想・・・でもボクも当たらなかったから、あげれないよ・・・。)

そんな事を思っている結衣を尻目に、優しい手が女の子に小さなカプセルを差し出していた。

「ほれ、ほれ。お嬢ちゃん。」

「え、いいの?!」

「ああ、ワシは要らんから、あげるよ。」

「・・・ありがとう!」

(わぁ、優しいお爺さんだよ~。良かった♪
みんな・・・あんな風に欲しがるんだ。そっかぁ・・・。)

誰だってみんな手に入れたくてしょうがない物があるんだと。
駄々をこねるなんて、自分には分からなかったから少し驚いた。


すっかり回転寿司を満喫して、部屋に戻ったらもう9時半も過ぎていた。
お風呂も入らずに、ベッドに死んだように倒れ込むと、そこはもう夢の世界。

ラベンダーの芳香と優しいオルゴールの音に誘われ・・・。



つづく―

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